ケイ線石 sillimanite Al2O(SiO4)  [戻る

斜方晶系 二軸性(+),2Vz=20〜30°α=1.654〜1.661 β=1.658〜1.662 γ=1.673〜1.683 γ-α=0.020〜0.022
※干渉色は紅柱石より高く,2次に達する。

形態:柱状,繊維状。なお,時に周囲や割れ目からセリサイト化し,仮像になっている場合もある。

色・多色性:無色。

双晶:なし。

へき開:結晶の伸びに対し平行な1方向のへき開が明瞭。
消光角:結晶の伸びに対し直消光。
伸長:結晶の伸びに対し,正。
※紅柱石は負。


累帯構造:認められない。

産状

泥岩起源の片麻岩中に柱状の斑状変晶をなすほか,マトリックス部分に黒雲母・石英・長石類と共生して繊維状集合体をなす(繊維状のものはフィブロライトと呼ばれ,特に黒雲母に密接に伴う)。ほかにはコランダム・アルマンディン・石墨などを伴うこともある。なお,片麻岩中では時にケイ線石と紅柱石の共存もあり,両者の温度・圧力の安定領域をまたがった条件での変成作用を暗示する。しかし,紅柱石にAlを置換して少量存在するMn・Feが2相共存をもたらしているか,変成流体中のAl・Siの化学種により安定領域外での晶出が起きた可能性もある。
また,高温の泥質ホルンフェルスや,泥岩塊や砂岩塊が火山岩に取り込まれたパイロ変成岩にも細柱状や繊維状で見られることがあり,その場合,黒雲母・長石類・コランダム・スピネル・石墨・きん青石・ムライトなどと共存する。

火成岩にはまれで,時にパーアルミナスな組成の花こう岩中や安山岩中に紅柱石・アルマンディン・菫青石などと共に斑状をなす。




片麻岩中のケイ線石 Sil:ケイ線石,Bt:黒雲母,Qz:石英,Ms:白雲母,Grp:石墨
泥岩・砂岩起源の片麻岩にはAl2SiO5鉱物がよく見られ,その多くはケイ線石である。粗大な柱状の斑状変晶をなすこともあるが,このように黒雲母に密接に共生した繊維状集合体で見られることも多い。黒雲母+ケイ線石+石英の鉱物組合せは,白雲母+アルマンディンの鉱物組合せが高温で分解し形成されたと考えられる。




泥質ホルンフェルス中のケイ線石 Sil:ケイ線石,Co:コランダム,Bt:黒雲母,Fel:長石類,Qz:石英
普通は泥質ホルンフェルス中のAl2SiO5鉱物は紅柱石だが,かなり高温条件(約700〜800℃)でできた泥質ホルンフェルス中にはケイ線石が見られる。非常に細かい繊維状集合体で,黒雲母と密接に共生するほか,長石類などからなる基質中に長く伸びた細柱状をなす。この非常に細かい繊維状集合体のケイ線石はコランダムを取り巻いていることから,それはコランダムと,基質に含まれる石英との反応縁である。
この試料は閃緑岩(マグマの温度が花こう岩よりも高く,約1000℃)が泥岩に接触してできた泥質ホルンフェルスで,通常の泥質ホルンフェルス(接触岩は花こう岩)より高温でできたものである。